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高橋幸彦の
ひと展 |
2021年5月13日(木)~6月11日(金) |
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高橋幸彦 |
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1947年、福島県双葉郡富岡町生まれ。東京芸術大学油画科へ進学しました。在学中には成績優秀者授与される安宅賞、大橋賞(現在「O氏記念賞」に名を変えている)を受賞します。 同大学大学院を修了して助手となり、1978年泰明画廊で初個展を開いたのをはじめ、積極的に個展やグループ展を開催し、具象現代展、明日への具象展などに出品を重ねました。その後は、東京芸術大学油画科講師を経て、1999年多摩美術大学造形表現学部教授に就任し、教鞭を執りながら個展を中心に活躍され、1918年に退職しました。 重厚な色使いで表現されるモチーフは、優しい曲線やエッジをきかせたシャープなラインによって様々な変化を見せ、豊かなマチエールで鑑賞者を楽しませてくれます。そこには画家の自由奔放なイマジネーションが遺憾なく発揮され、無限の創造力を感じさせます。 作品は、喜多方市美術館 、伊勢現代美術館などに所蔵されています。 |
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二人座像 高橋幸彦先生によるコラージュ作品です。先生はコラージュにも熱心に取り組んでおり、多摩美教授時代には一般向けのコラージュ講座を開かれていました。2001年に開かれた講座の紹介文では「貼りつける素材や画材は自由。それらが絵のなかで動き始め、語り始めます。描くこととコラージュのぶつかり合い、せめぎ合い、対話を経て、一つの調和を見出していきます。」と述べています。 画面には図形のようなシンプルな線で描かれた2人の人が並んで座っています。向って右の人は手足を丁寧に揃えており、足を斜めにしている様子から女性らしさを感じさせます。
作品は映画館の情報が英語でまとめられた情報紙やキャンバスの端切れ、色のついた砂などで構成されています。単に描くだけでなく、コラージュという性質・素材の異なるものを用いた表現を加えることで作品に豊かなマチエールが生まれます。そして、画面に貼りつけられたそれらは、私たち鑑賞者に「二人座像」というタイトルを超えた新たな想像を与えてくれます。
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キャンバスに油彩とコラージュ 5号 1997年 |
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コラージュとは コラージュ(collage)とはcoller(糊付けする)という語源からなるフランス語「糊による貼り付け」という意味です。この技法は、様々な性質や素材を組み合わせることで造形作品を生み出します。コラージュはキュビズムの代表的な技法のひとつです。 キュビズムとは、後期印象派の画家、ポール・セザンヌ(Paul Cézanne, 1839年1月19日 - 1906年10月23日)の多角的な視点の絵画やその理論に触発されたパブロ・ルイス・ピカソ(Pablo Ruiz Picasso, 1881年10月25日 - 1973年4月8日)とジョルジュ・ブラック(Georges Braque, 1882年5月13日 - 1963年8月31日)によって20世紀前半に創始された新たな絵画様式です。三次元の対象物を多角的な視点から観察し、ひとつの平面に収めています。
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ファインアート史上における最初のコラージュ作品は1912年にピカソによる『藤椅子のある静物画』です。これはキャンバスに描かれた籐椅子に、「籐の網目」の印刷されたオイルクロスが直接貼り付けられています。同年、ジョルジュ・ブラックは木目を絵具で模造するのではなく、木目模様を入れた紙片をそのまま支持体へと貼り付けた「パピエ・コレ(papier collé)」を制作します(「貼り付けられた紙」という意をもつ用語「パピエ・コレ」は紙のみを貼り付けた作品を限定的に指す)。 これらの作品は三次元の立体物を二次元の支持体に再構成しています。直接、表面の上に素材を貼り付けることを繰り返し、表面と奥行が定まらない均一な平面を生み出します。 キュビズムの画家たちが用いたコラージュやパピエ・コレは、ルネサンス時代の一点透視図法の慣習を打破しました。
現代において、コラージュは物理的な領域に収まらず、非物理的なデジタルデータのカット&ペーストにまで至るようになりました。ある領域と別の領域を断片化し、不連続なままに多層化、多重化させ、それらを逸脱/再編させる認識それ自体へと及んでいるのです。コラージュは、現実の物体の導入によって従来の美術作品の概念を根底から変え、いまや表現技法としての価値を得ました。 |
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参考文献:河本真理『切断の時代──20世紀におけるコラージュの美学と歴史』(ブリュッケ、2007) |
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ヒト・顔
曲線で囲われた中に目、鼻、口と思われる形が描かれています。キュビズムを連想させるような曲線と直線で人物を描き出す方法は高橋先生らしい表現と言えるでしょう。この作品では、柔らかく自由な動きを見せる曲線に対して、色面に粗々しさを持たせてコントラストを出すことで、より画面全体の表情に奥行きが生まれています。
キャンバスに油彩 5号 1996年 |
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紙を抱きて キャンバスに油彩 6号 1983年
画面のほとんどが赤と黒で構成されており、曲線が少なく、緊張感を与えます。 |
画面に向かって右側の半円の部分は、白い線2本と赤い線が目と口のように配置されて描かれていることから顔であると分かります。黒には周囲からの干渉や刺激をシャットアウトする効果があり、自分を守るための一種のバリアの役割をしてくれます。黒く塗られた人は、紙と思わしき赤黒い物体を抱き寄せており、画面を構成する赤と黒のコントラストによって、人物の黒さと、紙を抱えるポーズが与える閉塞感や重厚感が強調されいるように見えます。この様子から人物が内側に抱える感情の強さが読み取れます。 |
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